「役に立つ様相論理」はじめに(ボツ版) - 冷静に物事を進めるために

※ この記事内容は分かりにくいので別記事として書き直しました。

↓ この記事の書き直し版はこちら。 nologicnolife.hatenablog.com

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「〇〇するべき!」

「〇〇しないべき!」

どっちでもいい場合は?

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世の中は、いろいろな人びとの議論によって成り立っています。

政治家たちの議論によって日本の行く末が決まり、会社員の議論によって仕事の内容が決まり、家庭内の議論によって子育て方針が決まり、そして、友達との議論によって休日に何をして遊ぶかが決まります。

どのようなシーンでも、特に多いタイプの議論は「〇〇について賛成か反対か」というものです。「法律を改正して夫婦別姓を許可するべきか?」「この会社は新しい事業に手を出すべきか?」「子どもを塾に行かせるべきか?」「日曜日にキャンプに行くべきかどうか?」などなど。

賛成か反対かを議論する際には、賛成派と反対派それぞれの極端な意見ばかりが目立って収拾がつかなくなってしまう、ということがよく起こりがちです。なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか?

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例えば「夫婦別姓問題」を例にとって考えてみましょう。この問題について議論を行うために、賛成派の人と反対派の人をバランスよく同じ人数集めたとします。賛成派は全員「夫婦は同姓であるべきだ」という意見を持ち、反対派は「夫婦は別姓であるべきだ」という意見を持っています。さて、この議論は本当に良い議論になるでしょうか?

「夫婦が同姓であるべきかどうか」という問いと、「夫婦は同姓であるべきか別姓であるべきか」という問いは、同じ意味の問いのように見えますが、論理学的には全く別の問いです。前者の問いが「夫婦が同姓であるべきか、それとも別姓でもよいか」という意味なのに対して、後者の問いは「夫婦が同姓であるか別姓であるかどちらであるべきか」という意味になります。「同姓であるべき」と「別姓であるべき」の間には「同姓でも別姓でもよい」という中間的な選択肢がありますが、前者の問いはそれを考慮しているのにもかかわらず、後者の問いは中間的な選択肢を無視して「同姓であるべき」と「別姓であるべき」という極端な選択肢から二者択一を迫っている問いになっています。

「〜であるべき」「〜ではないべき」という2つの極端な選択肢しか用意されず、「〜であってもなくてもどちらでもよい」という選択肢が忘れ去られてしまう、というのは、賛成か反対かを争う議論においてよくある問題です。

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「命題が真であることを証明せよ」といった論理学的な言葉に最初に触れるのは、だいたいの方が高校数学の授業の中だと思います。そこでは「〜である」「〜ではない」といった二者択一の命題についてあれこれ考えることを学びますが、「〜であるべき」「〜ではないべき」「〜であってもなくてもどちらでもよい」という3つ以上の選択肢を論理学的に考えることについては学びません。

世の中の問題は二者択一のものだけではありません。むしろ3つ以上の選択肢がある問題の方が圧倒的に多いです。高校で学ぶ論理の範囲が二者択一のもののみに限定されていますが、そうでない論理についても勉強する機会があれば、世の中にあふれる3つ以上の選択肢がある問題について正しく考えることができるのではないでしょうか?

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本書では、世の中に多く存在する「真か偽かという2つの選択肢だけでは扱いきれない論点」について、正しく分析するためのツールとして、様相論理学という論理学の一分野の知識を読者の皆さまに得ていただくために、さまざまな例をあげて分かりやすくご説明していきたいと思います。

この本では、様相論理の中でもよく使われる4つの様相的関係と呼ばれるものについてご説明していきます。

時相論理

「いつか〜になる」「ずっと〜だ」

義務論理

「〜であるべきだ」「〜でもよい」

認識論理

「〜を信じている」「〜を知っている」

可能世界論

「必然的に〜だ」「〜かもしれない」

前述の「~であるべき」「~でないべき」「~であってもどちらでもよい」という3つの選択肢の整理方法については、義務論理のパートで詳しくご説明させていただきます。その他のパート、時相論理・認識論理・可能世界論の例についてはこの「はじめに」の文章では触れられきれませんでしたが、どれも人との議論や思考の整理に役立つものですので、それらについてもできるだけ分かりやすくご説明していきたいと思います。

様相論理という分野は、学問の世界では一定の知名度を持っていますが、役に立つ考え方なのにも関わらず、一般の方向けに書かれた本はありませんでした。この本が「様相論理」の普及に少しでもお役に立てれば幸いです。